研究概要 |
MnV2-xAlxO4の軌道/スピン整列とマルチクリティカリティ MnV2O4は57Kで軌道整列とスピン整列が瞬時に起こるが、VサイトをAlで置換するとスピン整列はそのままで軌道整列のみが消失することが知られている。これらの物質の磁場下で熱伝導を測定した結果、軌道整列の転移温度の直上で熱抵抗率が磁場とともに上昇、すなわち正の磁気熱抵抗が起こるが、転移温度以下で負の磁気熱抵抗に変化することを見いだした。またこの結果が、スピンと軌道が双二次で結合したランダウモデルを考慮することにより、軌道感受率の磁場による増大として記述できることを明らかにした。以上の研究から、スピン揺らぎと軌道揺らぎの臨界点付近での振舞いが、実験的・理論的に明らかになった。 La5Mo4-xCoxO16の面間強磁性-反強磁性のマルチクリティカリティ La5Mo4O16では、Mo4+(4d2,S=1)とMo5+(4d1,S=1/2)が正方格子上をチェッカーボードに配列している。190Kで、これらのスピンが正方格子面上でフェリ磁性に整列し、その面内のモーメントが面間では反強磁性的に整列すること、さらに温度を下げると70Kで面間方向が強磁性配列に相転移することを見いだした。また、反強磁性相で磁場を印加すると0.5T程度で強磁性配列に転移すること、それに伴う特徴的な磁気抵抗を見いだした。さらに、このMoの一部をCoに置換すると、反強磁性相での磁気抵抗に数100秒程度の緩和現象が起こることを見いだした。これは、強磁性秩序と反強磁性秩序が競合していて、磁化が有限の状態から基底状態磁化ゼロの状態へ戻る際に、様々な磁化ゼロ状態を経由して最終的な基底状態へ落ち着くことに由来すると解釈される。この現象は、強磁性と反強磁性の臨海点付近での新奇な物性であると考えられる。
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