研究概要 |
平成22年度は二つの方向で大きな進展があった。一つはDブレーンのT双対性による変換則を弦の世界面上の理論を用いて導出することに成功したことである。以前からそれがフーリエ-向井変換のようなものによって与えられると考えられて来たが、この研究ではそれが具体的に何であるかを初めて正確に同定した。この研究は超弦理論において基礎的、普遍的な価値を持つ。また、N=1超対称性を持つ4次元へのコンパクト化の様々な実現法の相互関係を明らかにするという応用を持っている。この結果は国際会議にて発表し、また、様々な拡張を含めた形で論文にまとめているところである。もう一つの進展は超対称な2次元非可換ゲージ理論の研究においてである。4次元においてSeibergが見つけたような双対性が2次元においても存在するということを発見し、また、それを超対称共形場の理論へ有効に応用することに成功した。この研究は超弦理論のコンパクト化の全体像をとらえる問題において新たな道を拓くものであると考えている。この結果は89ページの論文"Duality in two-dimensional (2,2) supersymmetric non-Abelian gauge theories"としてまとめた。これらの成果は「N=1超対称性を持つコンパクト化の全体像を把握し、それらの低エネルギー理論を理解するための方法を発展させること、更に理論を記述するために最も適した数学を探求もしくは開拓すること、を目指す」とした研究目的へ向けた大きな進歩であると見ることができる。
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