研究課題/領域番号 |
21340109
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
堀 健太朗 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 特任教授 (30535042)
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キーワード | 超弦理論 / 素粒子論 / 数理物理 / 幾何学 / 代数学 |
研究概要 |
平成23年度は、2次元及び3次元の超対称な非可換ゲージ理論に関する研究を推し進めた。一つの成果として、前年度に私が発見した双対性を線形シグマ模型に適用することにより、新しいクラスの2次元(2,2)超対称共形場の理論を構成することに成功した(Johanna Knapp氏との共同研究)。この研究における重要な発見として以下の(i)-(iv)が挙げられる。(i)少数のケーラーモデュライ数を持つ新しい3次元カラビ-ヤウ多様体を発見した。(ii)双有理同値ではないが導来同値であるようなカラビ-ヤウ多様体の組を系統的に与え、それらが射影幾何学における双対性と密接な関係にあることを見た。(iii)新しい理論のモデュライ空間が従来調べられていた例とは異なる構造を持つことを発見し、その特異点集合を調べる方法を開発した。(iv)ゲージ群が連結でない場合、テータ角の値に制限がつくことを発見し、双対性に関するパズルを解明した。この研究はいくつかの国際会議において発表し、さらなる研究の後に論文としてまとめる予定である。また、この研究とは独立に、3次元の超対称非可換ゲージ理論について研究した。3次元理論を円上にコンパクト化することにより、3次元におけるミラー対称性から2次元における ミラー対称性の主要な部分(Eguchi-Hori-Xiongのスーパーポテンシャル)が導出できることを示した。これらの成果は「N=1超対称性を持つコンパクト化の全体像を把握し、それらの低エネルギー理論を理解するための方法を発展させること、更に理論を記述するために最も適した数学を探求もしくは開拓すること、を目指す」とした研究目的へ向けた大きな進歩であると見ることができる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的の中核である「超弦理論の4次元N=1超対称なコンパクト化の全体像の把握」のために特に重要なのは2次元(2,2)超対称共形場の理論、特にその全体像を理解することである。現在までの研究においては新たなクラスの超対称共形場の理論の構成等、この方向における着実な進歩が見られる。また私自身の研究が導来同値性などの数学の発展を促し、逆に射影双対性等の数学の最新の発展が私の研究の動機付けとなっている。これは「理論を記述するために最も適した数学を探求もしくは開拓すること」という目的に沿う形となっている。
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今後の研究の推進方策 |
今後も超対称ゲージ理論、ミラー対称性を中心に研究を進める予定である。特に平成23年度に構成した新しいクラスの2次元(2,2)超対称共形場の理論を詳細に解析すること、さらに新しい理論を系統的に構成、分類すること、また、2次元の非可換ゲージ理論の間のミラー対称性について理解を深めることである。また、平成23年度はお休みしていたが、Dブレーンとオリエンティフォールドに基づいたコンパクト化の低エネルギー理論を理解するための方法を発展させることについても推し進めたい。
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