研究概要 |
平成24年度は、2次元及び3次元の超対称なゲージ理論に関する研究を推し進めた。前年度に構成した2次元(2,2)超対称共形場の理論の新たな族の詳細を調べると同時に超対称局所化の方法を用いた厳密計算の研究を開始した。特に2次元の広いクラスの理論において、半球面上及びトーラス上の分配函数を計算し、その結果Dブレーンの中心電荷及び楕円種数に対する一般表式をそれぞれ得た。(半球面はM.Romoとの、トーラスはF.Benini, R.Eager, Y.Tachikawaとの共同研究) この表式は線形シグマ模型から得られる2次元(2,2)超対称共形場の理論の詳細を調べるための強力な手段を与え、「4次元N=1超対称性を持つコンパクト化の低エネルギー理論を理解するための方法を発展させる」とした研究目的にかなう重要な成果である。中心電荷の表式はDブレーンの安定性やミラー対称性のもとでの変換性を調べる上での基本的なな指針を与え、また、楕円種数の表式によりこれまで限られた場合にしか分らなかったスペクトラムに関する情報が分るようになった。これとは別に、半球面上の分配函数の計算は超対称局所化の方法を境界の存在する場合に適用した始めての例となっており、3次元以上の超対称なゲージ理論にも指針を与えるという意義も持っている。また、この研究とは独立に、3次元の超対称非可換ゲージ理論について研究した。3次元理論の円上コンパクト化により、「臨界点の不足」という2次元のミラー対称性の候補が抱える問題をどう解決するかが不明であったが、円の半径が(0でなく)有限の状況では不足していた臨界点が存在することを確認した。これは2次元非可換ゲージ理論のミラー対称性を理解するための重要なステップであると期待される。
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