研究概要 |
平成25年度は、2次元の超対称なゲージ理論に関する研究を推し進めた。特に、前年度に開始した超対称局所化の方法による半球面上及びトーラス上の分配函数の研究を完結させた。これらはそれぞれDブレーンの中心電荷及び楕円種数に対する一般表式を与える(半球面はM.Romoとの、トーラスはF.Benini, R.Eager, Y.Tachikawaとの共同研究)。 また、その結果をこれまでに構成してきた線形シグマ模型へ応用した(J. Knappとの共同研究)。 半球面上の分配函数はガンマ函数の積分という形で与えられ、その収束条件が相境界上のDブレーンに対する「次数制限則」を与えることが分った。また、Dブレーンの中心電荷の諸相での表式や繰り込み群のもとでの振る舞いが明らかになり、球面上の分配函数が二つの半球面上の分配函数に分割されることも分った。この研究により、線形シグマ模型から得られる2次元(2,2)超対称共形場の理論について重要な情報を読み取ることが出来るようになった。これは「4次元N=1超対称性を持つコンパクト化の低エネルギー理論を理解するための方法を発展させる」とした研究目的にかなう重要な成果である。これらの結果はJ. Knappと構成してきた線形シグマ模型の具体例に応用され、理論のモデュライ空間の幾何学を決定することが出来た。その中で、完全に異なる二つの理論が同一のモデュライ空間を持つという驚くべき現象を発見した。これは目的の一つとして挙げた「超弦理論のコンパクト化の全体像を把握」することにおいて新たな問題を提起するものである。
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