研究概要 |
細孔径2.0nmの多孔質シリカMCM-41に純水及びヒドロキシルアミン(HA)水溶液を閉じ込め,その高圧下熱分析を行った。HA濃度が10wt%および5wt%のHA水溶液について測定したところ,液液相転移由来のピークが検出された。ピーク温度は,10wt%,5wt%ともに,圧力の増大とともに低温側にシフトした。低温相の体積は高温相より大きいことが分かる。5wt%HA水溶液の熱分析曲線のピーク強度は,圧力の増大に伴って減少し,相転移線上で臨界点に近付く,あるいはWidom線上で臨界点から離れる振舞を示す。この結果から,今日広く信じられている仮説とは反対に,低温水の液体~液体相転移線は負の圧力域にあり,臨界点も負の圧力で,転移線の低温高圧極限に存在すると結論される。 HAの水への添加効果を検討するために,HAと同様に,アミノ基とヒドロキシ基を有する1-アミノ-2-プロパノール,エタノールアミン,3-アミノ-1-プロパノール,の3つの第二成分を水に添加したバルク液体の常圧下示差熱分析を行った。1-アミノ-2-プロパノールの場合のみ,純水の熱容量極大温度233Kに繋がる熱容量ピークが観測され,ガラス転移温度るも上昇した。他の2つではピークは観測できず,T_gも低下した。このことは,HAと同様にアミノ基とヒドロキシ基が存在するだけでなく,その構造的配置も重要であることを示す。 H[Cu_2(phen)_2(CH_3COO)_2(H_20)_2Al(OH)_6Mo_6O_<18>]30H_20結晶を用いて,結晶性壁構造を有する細孔内チャネル水の熱特性を明らかにした。細孔径が1.8nmとかなり大きい本結晶では,界面を含めてチャネル水は低温まで非晶状態のままであった。これにより,結晶性壁構造を有する細孔の形成とその細孔水特性の概念的な細孔径依存性が明らかになった。
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