研究課題/領域番号 |
21340121
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
深尾 浩次 立命館大学, 理工学部, 教授 (50189908)
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研究分担者 |
中村 健二 立命館大学, 理工学部, 助教 (00511693)
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キーワード | 高分子積層薄膜 / 界面 / フラジリティ / 拡張パラメータ / 非平衡ダイナミクス / レプテーション / VFT / アレニウス |
研究概要 |
高分子薄膜での誘電緩和測定法を高分子積層薄膜に応用することにより、高分子薄膜内でのガラス転移ダイナミクスの位置分解測定を可能とし、ガラス転移機構解明に不可欠なダイナミクスの動的不均一性の解明が本研究の目標であった。それに対して、本年度は以下のことを行った。 1.P2CS積層薄膜のガラス転移に関係したα過程のダイナミクスを誘電緩和スペクトル法により調べた。これにより、誘電損失プロファイルのnarrowingが、積層薄膜のガラス転移温度以上でのアニール過程で起こっていることがわかった。このことは、緩和時間の分布がas-stackedの積層薄膜では単一高分子薄膜と同様にブロードになっているが、アニールとともにバルクでの緩和時間分布に近づくことになる。一方、α過程の緩和時間の温度依存性はas-stackedな状態では、アレニウス型に近いが、アニールとともに、より強い温度依存性を持ったVFT型に移行することが確認された。等温アニール過程において、前者は緩和関数を拡張型指数関数で表したときの拡張パラメータβの増加、後者はフラジリティ指数mの増加を意味し、βとmの間に強い正の相関が存在することが明らかとなった。これまでの研究によるとバルク系で、βとmの間に負の相関が存在することが知られており、積層高分子薄膜における正の相関はバルクでは観測されない特異な現象であるといえる。 2.アニーリングによる積層薄膜のダイナミクスのバルクへの移行は非常にゆっくりとしたタイムスケールで進行し、レプテーション時間よりも長い特性時間を有することが明らかとなった。界面での相互拡散により、積層薄膜内の界面のコントラストの低下がアニール過程において起こっていると考えられるが、それだけではこの非常に遅い時間発展は説明がつかず、新たなプロセスを考える必要があることを示している。
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