研究概要 |
本研究の目的は,地震動および電磁場変動の観測データをもとに,地震波と地球磁場との共鳴によって生じる電磁場生成の素過程を解明することである.そのために,地震波の到達,地震ダイナモ効果による電場の発生,イオンの運動・共鳴,などの素過程を観測データ,理論,そして数値シミュレーションを通して明らかにする.今年度は,静岡県で実施された地殻構造探査のための発破の位置・時刻情報を教えて頂き,発破点近くに3組の地震計および電場計測器を設置し,人工地震による地震動およびそれに伴う電場変動を観測した.データ解析の結果,初期の電場変動の方向は地震波伝播方向(発破点から観測点に向かう方向)に卓越するわけではなく,界面導電効果だけでは説明できないことを再確認することができた.ある観測点では,地震波の地表到達よりも電場変動が早く観測された.一方,地下水中のイオンが地震動によりサイクロトロン周波数で共鳴していることを確固たるものにするためには,北半球とは地磁気伏角の符号が異なる南半球において,地震動および電場の同時観測を実施することが必須となった.そのために,2011年2,月に発生したニュージーランド・クライストチャーチ地震の余震に対して,2観測点で地震動および電場の同時観測を実施した.1ヶ月以上にわたって観測を続けた結果,マグニチュード4以上の余震による地震動とそれが引き起こした電場変動のデータを得ることができた.しかしながら,ニュージーランドでの地球磁場鉛直成分の強さと電場変動の周波数を考えると,サイクロトロン共鳴するイオンの質量数は100程度となり,通常の地下水に含まれるイオンの中には候補がない.観測された電場の円偏光が何に起因するのかをさらに検討する必要がある.
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