研究課題
地球の下部マントルは、主要に、珪酸塩ペロフスカイトで構成されている。このペロフスカイトは、約120GPaの圧力で、ポストペロフスカイトへと圧力誘起相転移を起こし、この相転移が、マントル最下部に存在するD"層との境界を形成していると考えられている。従って、ペロフスカイトからポストペロフスカイトへの相転移機構とレオロジー変化、さらには、ポストペロフスカイト自体のレオロジーを調査することは、マントル最下部から表層に至る全地球的岩石圏のダイナミクスを理解する上で欠かすことができない。ペロフスカイトからポストペロフスカイトへの相転移を実験的に調査したところ、1.相転移に伴い、結晶粒の細粒化が起きることと、2.この相転移においては、ペロフスカイトとポストペロフスカイト間にトポタクティックな関係があり、ペロフスカイトのα軸(a_<pv>)が、ポストペロフスカイトのα軸(a_<ppv>)に、b_<pv>がc_<ppv>に、c_<pv>がb_<ppv>に置き換わることが示された。これらの結果から、マントル最深部に沈み込んでいくスラブでは、支配的な変形機構が、ペロフスカイトの転位クリープから、ポストペロフスカイトの拡散クリープを経て、ポストペロフスカイトの転位クリープへと発展していく可能性が高い。さらに、マントル最深部での流動パターンを水平方向が卓越しているとした場合には、ペロフスカイトのスベリ系を考慮すると、相転移直後に(から)、強い弾性的異方性を形成することが示唆される。このことは、D"層深さで環太平洋地域での強いV_<SH>V_<SV>という地震波速度異方性を上手く説明できる。今後は、追試を重ね、この実験結果の確度を挙げていきたい。
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