研究課題
今年度の計画は弾性波速度測定のルーチン化と、実際に白亜系四万十帯を対象とした試料測定を行い、音響物性を得ることであった。弾性波速度測定のルーチン化はほどなく完了した。試料交換の効率化、流体圧の制御などで問題が発生したが、それらも解決した。現在は1日に2, 3個の成型試料の測定を行うことが可能になっている。また、実際の白亜系四万十帯を対象とした測定では、まず対象とする境界を沈み込みプレート境界地震断層とし、徳島県牟岐町牟岐ランジュ北縁断層に境される上盤下盤についての弾性波速度測定を行った。上盤は砂岩主体のコヒーレント相で、下盤は泥岩主体のメランジュ相である。試料数は上盤5個、下盤10個の計15個で、下盤の泥岩5個については異方性を検討するために面構造に水平な試料と垂直な試料を測定した。測定は流体圧を1MPaに保ち、封圧を6MPaから66MPaまで5MPaごと増加させて測定した。500kHzのS波トランスデューサーを用いた。このトランスデューサーは微弱なP波も出すため、波形解析によってS波速度とP波速度を同時に測定することが可能である。その結果、有効圧の増加に伴って弾性波速度が速くなる傾向がそれぞれの試料から得られた。有効圧に応じてP波速度は砂岩では約4500m/sから5000m/sまで、泥岩では約4000m/sから4500m/sまで増加した。Vp/Vsはおよそ1.5-2.5程度であった。異方性については100m/s程度、面構造に平行な試料が速いことが分かった。北縁断層を境に上盤のの弾性波速度が500m/s程度下盤よりも速いことが分かった。この結果を用いて反射法探査から得られた反射強度と比較したところ、およそ40MPaの異常間隙水圧が断層帯に必要であることが、定量的な値として推定された。これは定常的に沈み込みプレート境界が流体によって弱化していることを示しており、これまでの議論とも整合的である。
すべて 2011 2010
すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (46件)
Geology
巻: 39 ページ: 395-399
GEOPHYSICS
巻: 76 ページ: SA19-SA34
Doi:10.1190/1.3511357
巻: (accepted 掲載決定)
Exploration Geophysics
巻: 42 ページ: 98-104
Geochem.Geophys.Geosyst
巻: 11
Field excursion guidebook for the Joint meeting of Korean and Japanese Geological Societies -Muroto Geopark- edited by Toru Takeshita, et al
ページ: 21-34
IODP Prel.Rept., 327
IODP Sci.Prosp., 327