研究概要 |
地球内核境界の構造とダイナミクスの解明は,地球磁場を維持するダイナモのエネルギー源や地球の熱史を理解する上で大変重要である.本研究は,地震学・地球電磁気学の分野で共同して,この課題に取り組むものである.本年度は以下の項目を遂行した. 1.地震波解析. PKP(cdiff)とPKP(DF)またはPKP(BC)とPKP(DF)の組み合わせによる走時差と振幅比を解析し,昨年度に得られた内核の速度構造と減衰構造をさらに詳しく検討した.その結果,内核のP波速度構造は,東半球において内核境界で0.5%速く,内核境界から深さ400kmで平均的な構造に一致し,西半球では内核境界で0.6%遅く,内核境界から深さ300kmで平均的な構造に一致することが分かった.一方,減衰構造は、東半球の内核境界から深さ200kmの範囲でQ値が180,深さ200kmから400kmでQ値1000となり,西半球の内核最上部400kmでQ値が約350とほぼ一定,かつ従来の値ほど高くないことが分かった.このような結果は,最近提唱されている内核における次数1の対流による不均質形成モデルと調和しない. 2.内核成長シミュレーション. これまでの内核の1次元成長モデルに対し,外核の熱力学と調和的となるように変更を加えるべく検討を加えた.また,空間的に非一様に内核が冷却される場合の定式化についても検討した. 3.地球ダイナモシミュレーション. 局所的なMHDダイナモの数値シミュレーションを継続して実施し,わずかな非等方性でもダイナミクスに影響を与えることが分かった.内核の半球構造がコア・ダイナミクスに及ぼす影響を調べるためのコード開発を継続した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1.地震波解析については,速度・減衰構造をさらに詳しく検討したため,さらに内核からの反射波PKiKPがなかなか検出できなかったために,予想以上に時間がかかった. 2.内核成長モデルについては,中心核全体で矛盾のない熱力学モデルを構築する重要性を認識したため,再解析の必要が生じ,時間を要した. 3.地球ダイナモシミュレーションについては,コードの開発完了に至っていない.
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今後の研究の推進方策 |
1.地震波解析.東西半球における速度・減衰構造については,結果をまとめて論文を執筆する.内核反射波の振幅を解析し,内核境界の特性を議論する. 2.内核成長モデルについて,解析が済み次第結果をまとめて論文を執筆する. 3.地球ダイナモシミュレーションについて,速やかにコードを完成させて,内核の半球構造の影響を吟味する.
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