研究概要 |
昨年度完成させたLESモデルを用いて、日変化する(乾燥)対流混合層の中に生ずる塵旋風の再現実験を行い、塵旋風の発生機構と回転源を探った。特に、回転源の理解を進めるために、人為的に惑星の回転によるコリオリ力を変化させた実験を行うことにより、塵旋風が対流が生み出す鉛直軸回りの循環を回転源として発生することを突き止めた。次に、地表面からのダストの巻き上げと落下の効果を組み込み、一般風が弱いときの対流混合層に浮遊するダストの数値実験を行った。この数値実験の結果は弱風時の中国の沙漠地域における観測データをオーダーとして説明するものであり、その成果を報告した論文(Ito,Niino and Nakanishi:2010,SOLA)は日本気象学会SOLA論文賞を受賞した。また、湿潤過程を含んだLESモデルとしてRAMSを採用し、冬季の寒気吹き出し時の対流混合層のシミュレーションを行い、蒸気旋風の再現に成功した。更に、塵旋風や蒸気旋風に似た大気中の強い渦である竜巻の再現実験を行い、その形成機構を調べた。その成果を記述した論文(Noda and Niino:2010, Journal of the Meteorological Society of Japan)は日本気象学会気象集誌論文賞を受賞した。 更に、昨年度に引き続き大気中の激しい渦に関する室内実験を行い、接線速度の半径分布の回転と流量への依存性を調べるた。また、LESモデル及び室内実験で得られる激しい渦の構造と力学に関する理論的考察を行った。
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