研究概要 |
本研究は極地氷床氷の流動および結晶微細組織発達メカニズムの解明と氷床中での同位体や不純物の粒界拡散を考慮した古気候・古環境情報解読の高精度化を目的として,これまで測定不可能であった拡散クリープによる氷の微小変位および粒界の体積変化や物質の拡散を最先端の精密計測技術で測定し,分子サイズレベルの物質移動量の情報を得ようとするものである. 23年度は研究計画に沿って研究を実施し以下の成果を得た. まず,位相変調ホモダイン干渉計の精度向上のための次の検討・改良を行った.(1)ファイバへのレーザ光最適入射角度を決定し、ノイズおよびリタデーションの影響を減少させた.(2)偏光方向を測定することで、時間により偏光方向が変化する揺らぎ現象の原因を特定した.(3)EOMから出力されるレーザ光の偏光状態を測定することで、電圧と偏光の関係を調べ、45°の直線偏光が干渉計に入射できるようにした。その結果,従来のリザージュよりも安定してリサージュ波形を取得できる時間が増加し、外乱が入っても再びリサージュを描くまでの時間が短縮された。次にクリープ実験を行い,単結晶氷の低歪速度領域の温度一定条件下での応力依存性及び応力指数(n値)、応力一定条件下での温度依存性及び活性化エネルギーを明らかにすることができた。本実験の結果、今回の温度及び応力条件下での歪速度は1.28×10^<10>~3.82×10^<11>s^<-1>の領域を計測できた。応力依存性実験の結果よりn値は0.9、温度依存性実験の結果より活性化エネルギーは59kJ/molとなった。今回計測された歪速度は、応力依存性実験、温度依存性実験ともに今までに計測されてきたものより1~2ケタ程度小さい値を示した。
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