研究課題/領域番号 |
21340137
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
淡路 敏之 京都大学, 理学研究科, 教授 (40159512)
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研究分担者 |
里村 雄彦 京都大学, 理学研究科, 教授 (20273435)
根田 昌典 京都大学, 理学研究科, 助教 (10273434)
石川 洋一 京都大学, 理学研究科, 助教 (70335298)
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キーワード | 大気海洋相互作用 / 短周期熱・水混合フィードバック / 西風バースト / 海洋混合層 / 積雲対流 |
研究概要 |
本年度は現実の系における海洋混合層・大気フィードバックと西風バースト(WWB)・積雲発生発達の基本過程の解明を目標に、ラニーニャからエルニーニョへの遷移期を対象に、超高分解能雲分解大気・海洋混合層広域モデルの開発・改良を行い、海面フラックスの変動とWWBの発生・持続および海洋混合層の初期状態との関係を明確にすることを目指した。まず、現実系での短周期大気海洋相互作用の実態解明を深化すべく、最新の衛星データ群を駆使して短周期大気変動に対する海洋表層の流れや水温の変化過程を把握できる最先端の解析手法の開発に成功し、米国の国際誌に投稿、直ちに受理された。その結果、大気場の日変動に伴い想定以上の海洋内部波が発生し、表層の流れと海水混合に有意な影響を与える可能性が示唆されたため、その効果をモデルに取り込むこと必要が分かった。そこで、気象研究所との連携による雲分解大気海洋結合モデルの広域化に加えて、内部波の混合効果を加味できるようモデルを改良して実験を行い、エルニーニョ発生の鍵を握る西部--中央熱帯太平洋表層のバリアーレイヤー(以後BL)に着目した熱塩エネルギー収支解析を行ったところ、夜間の冷却時に雨が弱いとBLの塩分成層を破壊して混合層は深まり躍層下部に蓄えられた貯熱が海面近傍へ輸送されるため、夜間の海面の低温化が和らぎ、結果的に昼間の加熱の積分効果が長期化してWWBの維持に好適な環境が維持される。風による内部波起源の下層との熱交換はこの積分効果を助長するよう作用すること等が明らかとなった。一方、降水がある閾値(実験では5mm/hour)を超えると、海面近傍に強い塩分成層構造を持つBLが形成されて混合層は浅くなり、WWBは持続しにくくなる。以上により、エルニーニョ発生のキーであるWWBの発生・維持過程の理解が可能となったが、理事就任のため研究を中止せざるを得なくなった。研究メンバーによる発展を期待している。
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