研究分担者 |
堀之内 武 北海道大学, 地球環境科学研究院, 准教授 (50314266)
小司 禎教 気象庁気象研究所, 予報研究部, 主任研究官 (70354446)
瀬古 弘 気象庁気象研究所, 予報研究部, 主任研究官 (60354445)
河谷 芳雄 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球環境変動領域, 研究員 (00392960)
矢吹 正教 京都大学, 生存圏研究所, 研究員 (80390590)
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研究概要 |
本研究では以下に示す3課題を推進しており、(1)で生成するGPS掩蔽データを、(2)では天気予報改善の実利用に、(3)では大気現象の科学解明に活用している。主な研究成果を述べる。 (1) GPS掩蔽データ解析システム:GPS掩蔽にホログラフィ法の一種であるFSI解析を適用した。従来の幾何光学解法では約1.5kmだった高度分解能を約200mまで向上できた。また、気温変動の鉛直波数スペクトル解析から、最高高度約28kmまでFSI法が有効であることを示した。 (2) 数値予報モデルへのデータ同化:従来、GPS掩蔽では屈折率、地上GPS観測では可降水量が用いられたが、より観測量に近い電波経路に沿った遅延量や屈折角の利用を進めた。さらにCOSMICによる大量のGPS掩蔽データを全球モデルに同化する実験に取り組んだ。 - ベンガル湾のサイクロンNARGISに対する地上GPSデータ,台風USAGIへのCOSMIC掩蔽データ同化により,台風の発生発達・進路予測に改善が認められた。 - 2009年那覇での豪雨にGPS可降水量、天頂遅延量、視線遅延量それぞれの同化インパクトを調べたところ、視線遅延量が最も豪雨予測に効果があった。 - GPS掩蔽の視線データと地上GPSデータ(可降水量や視線水蒸気量)を同時に同化し、相乗効果を確認した。 - GPS掩蔽の屈折角を同化すると,屈折率の同化で現れた負バイアスが,対流圏下層では変化がないものの,境界層上端で屈折率鉛直勾配が卓越する事例ではほぼ解消した。 - 気象庁高解像度版実験システムで,COSMICデータの全球同化予報実験を行った。対初期値予報スコアは冬に改善,夏では中立だった。これにより2010年11月1日にCOSMIC掩蔽データが全球解析へ定常利用が開始された。 (3) 気温・水蒸気の分布・擾乱特性: - 成層圏突然昇温時の大規模温位フロント形成と大気重力波について,GPS掩蔽データを用いた解析を進め,両者を分離する手法を提案した。 - 非定常重力波パラメタリゼーションを組み込まない気候モデルを用いて、二酸化炭素倍増時の赤道成層圏準2年振動(SQBO)の変化を調べたところ、SQBOの周期は長く、振幅は弱く、下端高度が上がる傾向が見られた。温暖化により熱帯対流活動が活発になり、重力波に伴う運動量フラックスが10-15%増加し、より位相速度の速い重力波が増えた。温暖化シグナルが波動伝播を介して超高層でも現れる可能性が示唆された。
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