研究概要 |
1.国際水惑星実験相互比較プロジェクトAPEのデータサーバの整備:標準的解析データチェックを行い、一部の画像を再作成するためのプログラムの整備を行った。 2.APE標準実験にみられる熱帯降水活動の調査:東西一様海水温実験で自発的に生成する降水の時空間変動について詳細に比較検討した。概要は次の通りである。(1)降水構造は極めて多様であるが、モデル間の相違の大要は、3種類の代表的擾乱(ケルビン波、西進慣性重力波、移流成分)の振幅の大小として整理できる。(2)3種類の代表的擾乱をスペクトルフィルターと回帰分析により抽出してモデル間で比較した。その結果、水平構造には相当程度の類似が認められる一方、鉛直構造はモデル間で非常に異なっている。非断熱加熱を解析した結果から、物理過程、特に積雲パラメタリゼーションの相違が擾乱の多様性の原因であることが示唆される。 3.APE海水温アノマリ導入実験にみられる応答構造の調査:海水温を東西に非一様とした場合についての比較検討を行った。概要は次の通りである。(1)降水応答の強度はモデル間で最大3倍程度異なる。その大小は海水温が東西一様な実験での熱帯収束帯の赤道への収束の度合いと関係している。(2)熱帯の鉛直循環の応答はモデル毎に大きく異なる。(3)熱帯の風・気圧応答の水平構造はモデル間で共通性が見られる。ただし、その特徴はよく知られたMatsuno-Gill構造とは全く異なる。その原因は、APEで指定されている海水温南北分布に起因する東西平均場の力学的構造にあることがわかった。(4)海水温アノマリ導入に伴い熱帯上部対流圏で西風加速が起こるが、その強度は降水アノマリの強度とは対応しない。その詳細な南北分布が重要であると思われる。 4.上記の2,3について論文をまとめ、J. Meteor. Soc. Japan, APE Special issueに投稿した。
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