平成23年度に引き続いて、本年度も北は青森県から南は沖縄県におよぶ日本各地の第四紀哺乳類化石産地や遺跡の現地調査と産出化石の系統分類学的研究を行うとともに、研究協力者の協力なども得て、化石骨を試料とした年代測定を実施し、多くの新しい年代値を得た。そのような研究活動で得たデータをもとに、後期更新世から完新世にかけての動物相の変化、特にその中で起った絶滅現象の実体を明らかにすべく、データをまとめている。平成23年度以降、特に精力的に調査を行っている琉球列島では、これまでに知られていなかった新しいデータが数多く得られ、それを日本本土のものと比較することによって、そこで起った絶滅現象が日本本土のものと時期的にも内容的にもかなり異なったもので、人類の活動の影響を強く受けている可能性が高いことが推定された。現在、そのような成果を論文化すべく準備を進めている。琉球列島と地理的に近い台湾での調査もこれまでに引き続いて実施し、これまで知られていなかった台湾での後期更新世から完新世にかけての動物相変化と絶滅現象の実態解明に向けて、おおよその見通しをつけることができた。中国での調査も平成23年度に引き続いて行ったが、本年度は現地調査を行わず、中国科学院古脊椎動物古人類研究所と動物研究所での標本調査と、本研究に関連するデータの収集、現地研究者との意見交換や情報交換などに研究活動をとどめた。平成23年度から第四紀の哺乳類の絶滅現象についての知識を一般に普及することと、本研究の成果と比較検討する目的で欧米の研究書の翻訳を行い、本年度末で1冊の翻訳をほぼ完成し、近日中に出版予定となっている。
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