研究課題
先行研究により、境界断層(四万十付加帯興津メランジェ直上の古震源断層)を挟んで上盤側の野乃川層側約1kmと下盤側の興津メランジェ約500mの計22地点からジルコンFTデータが得られ、上盤側の断層近傍20m以内ではFTのアニーリングによる短縮と年代値の若返りが見いだされた。そこで、この加熱帯の時空分布を絞り込むことを目指し、上記のデータが得られた海岸付近の2つのルートに加えて、新たに陸側の2つのルートについてもジルコンを用いたFT分析を行った。採取した試料のうち約半分は、追加のジルコンFT分析のため、京都大学において鉱物分離しジルコンを抽出した。形状・透明度・粒径の良好なジルコンを実体顕微鏡下でハンドピックし、埋め込み、研磨の後、アルカリ溶液中でエッチングし、自発トラックを出現させた。高解像度の透過型光学顕微鏡下で観察し、結晶内部に両端が有り全長を持つトラックについて、トラックの長さを測定した。昨年度は海岸側の1つのルートの補足的な測定を行ったが、今年度は陸側の2つのルートについて測定を進め、合計52地点においてデータを得ることができた。その結果、上盤側では4つのルートのすべてにおいて断層から20m以内の地点で有意なトラック長の短縮が見られた。また、下盤側でも新たに分析した2地点において短縮したFT長が得られた。従って、加熱帯は断層沿いの広い範囲に存在すること、また、加熱の強度には局地性があるらしいことが明らかになった。加えて、年代値の求まっている代表的な地点について温度履歴のインバージョン解析を行い、加熱時期の絞り込みを行うことができた。付加体内の震源断層についてのこのような研究は前例がなく、インパクトの大きい成果が得られた。
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