研究概要 |
本研究は太古代大陸塊直下の下部地殻-リソスフェアマントル捕獲岩と古原生代のエクロジャイトを含む地塊内高圧変成帯の地質学的研究に先進的な地球化学・年代学の分析技術を応用する.捕獲岩がもつ安定地塊直下の情報に地塊内高圧変成帯表層地質に記録された下部地殻物質の変動の情報を相補的に加えることにより,地球物理学と地球化学が描写する安定地塊の「根」を物質科学的に検証し,安定地塊の根の実像と陸塊の進化を解明する.そして,タンザニア地塊を例に太古代安定地塊の根の進化モデルを提唱することを目的とする. 本年度は初年度に引き続き古原生代以降の大陸塊縁の造山帯発達様式パターンの理解を目指し,顕生代の沈み込み変成帯や付加型造山帯に併置した島弧下部地殻について比較研究を進めたほか,捕獲岩による太古代地塊下部地殻-リソスフェアマントル断面の多角的復元に集中した.特に,特注の1インチ円形スライドガラスを用いてざくろ石かんらん岩の岩石学薄片を製作し,光学鉱物顕春微鏡,電界放出型走査型電子顕微鏡,電子線プローブ微小領域分析装置による鉱物組織・組成共生関係の特徴付けを行った.そして,二次イオン質量分析装置を用いた微小領域主要・微量元素濃度の測定によって,安定地塊の「根」を構成していたマントル物質が記録する太古代のマントルの肥沃化についての地球化学的な証拠を見出した.さらに,深部地殻構成に記録された時間情報を包括的に解析するためには希ガス年代学などに比べて,ジルコンのウラン-鉛年代測定がより重要であると判断し,193nm波長レーザー照射型誘導結合プラズマ質量分析装置を用いたジルコンの極微小領域ウラン-鉛年代測定法の開発に取り組んだ.これらの取り組みによって,太古代地塊直下の下部地殻-リソスフェアマントルにおける岩石学的・地球化学的な多様性をもたらした固体地球プロセスについて時間情報の解析が可能になりつつある
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