研究概要 |
本研究は太古代大陸塊直下の下部地殻-リソスフェアマントル捕獲岩と古原生代のエクロジャイトを含む地塊内高圧変成帯の地質学的研究に先進的な地球化学・年代学の分析技術を応用する.捕獲岩がもつ安定地塊直下の情報に地塊内高圧変成帯表層地質に記録された下部地殻物質の変動の情報を相補的に加えることにより,地球物理学と地球化学が描写する安定地塊の「根」を物質科学的に検証し,安定地塊の根の実像と陸塊の進化を解明する.そして,タンザニア地塊を例に太古代安定地塊の根の進化モデルを提唱することを目的とする. 最終年度は研究分担者一人の異動(辞職)によって当初計画していた希ガス分析は進められなくなった.しかし,前年度までの取り組みによって,太古代地塊下部地殻-リソスフェアマントル断面の多角的復元には,できるだけ深い位置から地表に運ばれた捕獲岩試料の詳細な岩石学と二次イオン質量分析装置を用いた地球化学が最も有効であることが明確となり,本年度は,1.下部地殻-リソスフェアマントル断面復元のために必要な追加データの解析と,2.総合的なデータの解釈に取り組んだ.それらの取り組みによって,特に,ざくろ石かんらん岩試料の解析から,安定地塊の「根」を構成していたマントル物質の不均一性と,それらが記録する複数のイベントの詳細が識別できるようになった.結果的に,太古代地塊直下の下部地殻-リソスフェアマントルにおける岩石学的・地球化学的な多様性をもたらした固体地球プロセスについて解釈可能になり,現在,本研究課題の主成果を学術論文として纏めつつある.
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