研究分担者 |
小池 裕子 九州大学, 大学院・比較社会文化研究院, 教授 (40107462)
小山内 康人 九州大学, 大学院・比較社会文化研究院, 教授 (80183771)
柏木 健司 富山大学, 理工学科, 准教授 (90422625)
坂井 三郎 海洋研究開発機構, 地球内部変動研究センター, 研究員 (90359175)
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研究概要 |
鍾乳石とトゥファは人口が集中する温帯~亜熱帯の陸域古気候を定量的に解析するという意味で重要な研究題材であり,両者を併用することで長期的かつ解像度の高い古気候情報が得られると期待される。今年度は国内外の数地点の鍾乳洞において石筍試料を採集し,分析を進めた。石筍試料は半割され,軽く研磨した上で,その一方の試料から,備品として購入した凍結ミクロトームを用い,0.2mm間隔で多数のサブサンプルを削り出し,分析試料とする。この装置の特長は,削り出し時のサンプルロスが少なく,正確で迅速な試料作成ができる点にある。約3000個のサブサンプルの酸素・炭素同位体測定を行い,新潟県糸魚川市・広島県神石高原町・滋賀県多賀町の試料について良好なプロファイルが得ることができた。また,石筍の年代測定を国立台湾大学の沈准教授に依頼した。 新潟県糸魚川市で採集した長さ約16cmの石筍試料は過去8千年間に沈殿したものであった。石筍の酸素同位体比は,1,500年前までは時間とともに増加し,その後,減少する傾向が認められた。一方,広島県神石高原町で採集した石筍は8,000~4,500年前に沈殿した物であり,その酸素同位体比はいくつかのスパイクを含むものの,全体的に1.2‰ほど減少する傾向を示した。すなわち,年代の重なる8,000~4,500年前の期間では,2つの鍾乳石が示した傾向は逆であることが判明した。石筍の酸素同位体値は,降水の年間平均値を引き継ぐと考えられ,糸魚川では冬のモンスーンの影響が,神石高原では夏のモンスーンの影響が色濃く反映されたものと考察された。また,トゥファについても同様の解析を進めた。
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