研究課題/領域番号 |
21340151
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
千葉 聡 東北大学, 大学院・生命科学研究科, 准教授 (10236812)
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研究分担者 |
占部 城太郎 東北大学, 大学院・生命科学研究科, 教授 (50250163)
豊福 高志 海洋研究開発機構, 地球内部変動研究センター, 研究員 (30371719)
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キーワード | 陸産貝類 / 進化 / 化石 / 適応 / 年代測定 / 人間活動 / 古環境 / 環境変化 |
研究概要 |
人間活動によって、生態系がどのように変化したかを調べるため、小笠原諸島や琉球列島の陸貝化石の炭素、酸素同位体比の分析を通して、群集や生活様式、表現型に対する環境変化の影響を推定した。これらの陸貝化石は、砂丘や河床、洞窟から採取された。小笠原から産出した化石の年代を、AMS法年代測定と較正曲線による暦年代推定により求めたところ、5万年前以降、310年前までの年代を示すもので構成されることがわかった。種構成や形態的特徴を調べた結果、1万年前と300年前に大きな変化が生じていることが示された。特に、現在と300年前以前の人間が入植する以前の貝化石の形態的特徴を比較したところ、殻のサイズ、背の高さ、巻き数などに違いが認められたほか、色彩多型に大きな変化が生じていることが示された。これは人為的な生息環境の変化により、急速に表現型の進化が起きた可能性を示唆している。次に各地点の化石の産出状況の解析結果とあわせ、人が入植する以前の陸貝相やその形態的特徴、さらに当時の陸貝の生態やそれをとりまく生態系の推定を行った。δ13Cとδ180を分析したところ、1万年以前とそれ以降、および300年前とそれ以降で、値に大きな変化が生じていることが示された。このことから最終氷期の終わる今から1万年前に、植生が大きく変化したこと、そしてその後、人の入植した300年前以降にも大きな植生の変化があったことが示された。以上の結果から、300年前以降に生じた殻の特徴の変化は、人の入植に伴う植生環境の急速な変化に応答して生じたものであると考えられる。特に色彩多型に違いを生じていることから判断して、集団の遺伝的な性質が急速に変化する進化的な変化が、ごく短い期間に起きたことが示唆される。
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