研究概要 |
腕足動物化石のδ^<13> C値およびδ^<18> O値をより信頼性の高い古環境指標とするため,現生腕足動物殻の炭素・酸素同位体組成の種間差および個体差の程度を検討した.亜熱帯.冷水帯域の現生腕足動物殻のδ^<13> C値およびδ^<18> O値の種間差を検討した結果,殻の同位体組成に影響する生物学的同位体効果の程度は種によって大きく異なることが明らかとなった.従来の研究において古環境指標として有用とされた種のうち,熱帯.亜熱帯域および冷水帯域に生息する現生腕足動物(2属2種)の個体差を検討した結果,炭素同位体および酸素同位体に関して周囲の海水と同位体平衡もしくはそれに近い状態で形成され,そのδ^<13> C値およびδ^<18> O値の個体差が小さい部位を特定することができた.しかし,同位体組成に影響する生物学的同位体効果の程度は,同一種内においても個体間の違いが認められた.このように,古環境指標として最適な種および特定の部位の同位体組成を用いた時のみ,腕足動物化石のδ^<13> C値およびδ^<18> O値を用いたより正確な古気候・古海洋環境の復元が実現できる.
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