研究概要 |
1. 2009年大村湾中央部では6月上旬から酸素濃度が低下し,8月中旬には湾中央部から北部にかけてほぼ無酸素状態になり,9月上旬には湾南東部から東部に移動しており,9月中旬には湾口部から高酸素濃度の海水の侵入によって解消された. 2. 大村湾で取得された既存の赤潮調査のデータを基に夏季成層期(7-8月)と秋季混合期(9-10月)の溶存酸素濃度と主要栄養塩との相互関連性を検討した結果,溶存酸素濃度(DO)が長期的に低下する夏季に底層のDINとDIPがDOと負の相関を示すこと、またDIN/DIPがDOと正の相関を示すこと、一方、DO濃度が回復する秋季には10m層と底層のDINとDOの間に負の相関、DIN/DIPとDOの間に負の相関が見られることが分かった。 3. 植物プランクトンでは貧酸素水塊の出現前に珪藻Nitzchia spp.を主に,消滅後にLepidocylindrus danicusを主にしたブルームが発生し,その後渦鞭毛藻Prorocentrum sigmoidesの出現があった. 3. 9月18-22日にかけて試作したメソコスムの運用試行を実施し,栄養塩濃度の変化を調べたところ,表層で硝酸,アンモニア,ケイ酸の減少が確認でき,メソコスムの作動が適切であることを確認した.さらに,より効率よくかつ適切に試水採取が可能になるようにメソコスム底部に改良を加えた. 4. 湾中央部で採取した長さ150cmの柱状試料の海底面下130cm付近に長径7-8cmのイセシラガイ化石が産出した.本種は現在の大村湾には生息しておらず,過去300-400年間に貧酸素水塊の発生等による環境悪化が推察された.また,本試料の平均堆積速度を^<210>Pbと^<137>Csを用いて推定した.その結果,0.27±0.06cm/yの平均堆積速度を得た.これは既存の堆積速度値と調和的であり,次年度に予定している大村湾の中長期的環境変化の時間指標として活用できることを確認した.
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