研究課題
2010年夏季の大村湾は8月後半に著しく水温が上昇しその状態が9月20日頃まで継続したため、鉛直成層が強化され貧酸素化が急に進行しほぼ全域にわたって底層に貧酸素水が分布した。他の年に比べて、貧酸素化した層の厚みも増加した。貧酸素水の直上にクロロフィル濃度の高い水塊が出現した。このことにより貧酸素化に伴って底泥から溶出する栄養塩が植物プランクトンの増殖など低次生産に大きく関与していることを示唆された。堆積物表層では有機炭素量が1.4~3.0%、有機窒素量が0.17~0.35%で、水深が周りより低い湾中央部に多く分布していた.栄養塩フラックスは分析方法による差が見られたが、分解者であるバクテリア等の働きが活発になる高水温時、また、生物の腐敗が進行し,鉄吸着態リンが放出される嫌気状態時に、アンモニアやリン酸が多く溶出する傾向がみられた。ケイ素の溶出は、溶存酸素濃度に関わらず水温の高い時に多くみられた。メソコスム実験(11月7~17日)では海水撹拌が植物プランクトン群集組成に与える影響に注目した.実験開始日にはどの区画でもProboscia indicaが優占し,群集全体の約90%を占めていた。実験区では、開始日以降、珪藻密度は増加し、P.indicaが90%以上の状態が実験最終日まで続いた。対照区では11月11~13日に細胞密度と群集組成が変化した。細胞密度は徐々に低下し、Prorocentrum sigmoidesが優占した。この時、P.sigmoidesの密度は群集全体の約90%を占めた。その後、珪藻の密度は高くなり、実験最終日にはP.indica細胞は再び群集の約90%を占めた。メソコスム外部では9日にP.sigmoidesの細胞密度がやや高くなったが、その後は低下し、珪藻の密度が高くなった。群集組成は実験終了日までP.indecaが70~90%で優占した。栄養塩濃度の低かった実験区では実験期間を通してP.indecaが優占し,栄養塩濃度が高かった対照区ではP.sigmoicesが、メソコスム外部の海水ではP.indicaが優占していた。これらより、植物プランクトン群集組成を決めるのは、栄養塩濃度ではなく撹拌も重要であると考えた。
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日本プランクトン学会誌
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