研究分担者 |
中田 英昭 長崎大学, 大学院・水産・環境科学総合研究科, 教授 (60114584)
山口 仁士 長崎大学, 大学院・工学研究科, 准教授 (10359143)
梅澤 有 長崎大学, 大学院・水産・環境科学総合研究科, 助教 (50442538)
和田 実 長崎大学, 大学院・水産・環境科学総合研究科, 准教授 (70292860)
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研究概要 |
植物プランクトンは生態系の基盤をなし,その趨勢は水温,塩分,光エネルギーの他,栄養塩の支配を受ける.現在の沿岸域で優占する植物プランクトンは珪藻類,渦鞭毛藻類,ラフィド藻類などであるが,それらのどのグループが優勢となるかについては十分に理解されていない.本研究では貧酸素水塊が定期的に発達する閉鎖系海域の西九州・大村湾を調査海域とし,貧酸素水塊の発達に伴って底質からの選択的PO_4溶出現象に注目し,それが植物プランクトン群集に与える変化を現場観測とメソコスム実験を用いて明らかにし,更に柱状堆積物に残された渦鞭毛藻シスト群集の変化から海水中の栄養塩変化を推察した.その結果,現場では1)夏季の貧酸素水塊は大村湾固有水と外洋水が湾口で混合した高密度水が中層に貫入して躍層が形成され, 2)海水.堆積物境界域でバクテリアの有機物分解活動により貧酸素水塊が形成される. 3)高水温期の貧酸素環境では堆積物からNH^+_4やPO^<3->_4がより多く溶出する,ことが明らかになった.メソコスム実験では人為的に貧酸素環境を再現し,底質からの栄養塩溶出と植物プランクトン群集変化を調査した結果, 4)貧酸素環境下ではNH^+_4やPO^<3->_4が溶出し,また優占プランクトンが珪藻から渦鞭毛藻に変化したことが明らかになった. 5)柱状堆積物中の渦鞭毛藻シスト群集は従属栄養性種の増加が示すところの1970年後半以降に富栄養化が進行したことが明らかになった.
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