研究概要 |
1. 中国湖北省(揚子地塊)興山地域の下部カンブリア系と,宜昌・長陽地域の中部カンブリア系~下部オルドビス系の現地調査を行った.その結果,「古杯類礁の発達様式」と「骨格生物優先礁の初期創出過程」に関するデータが得られた.比較参照地として,山東省(北中国地塊)長清地域で,中・上部カンブリア系の「微生物礁の岩相」ならびに堆積相変化の予察的な検討を行った. 2. 湖北省の中部カンブリア系~最下部オルドビス系(覃家苗層~南津関層)はドロマイト化作用を強く被っており,岩相の特性が必ずしも明瞭ではない.散点的に,ストロマトライト礁の形成が認められる.造礁性の大型骨格生物は確認されない. 3. 後生動物礁として,分郷層[下部オルドビス系(Tremadocian)]に,「コケムシ-有柄類礁」,「普通海綿-コケムシ礁」,「普通海綿-微生物礁」が識別される。普通海綿は,「微生物類による分解作用」と「それに付随する石灰化」を通じて礁の構築に深く関与している.「コケムシ-有柄類礁」の場合,有柄類の構造は華奢であるが,その表面をコケムシが被覆・連結することで,枠組み構造自体が堅牢になり,バイオハームが構築されている.本礁は,「骨格生物が主要枠組み構築者である最古の礁」である. 4. 地層中に狭在されるshellbedsの定量的・定性的な解析によると,「礁の構築様式の転換時期」に,カンブリア紀型動物相から古生代型動物相への交替(進化的な変遷)が認められる.その時期に,堆積システムの変化(「微生物岩や石灰質扁平礫礫岩の減少」と「生物擾乱作用の増加」)も生じている. 5. 山東省のカンブリア系では,揚子地塊では必ずしも得られない,「微生物礁の構成や消長」に関する情報が得られた.今後,なぜ揚子地塊で先駆的に礁の構築様式の変化が生じ,オルドビス紀生物大放散へとっながる大変革が生じたのかという問題にアプローチする予定である.
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