研究概要 |
活火山の典型的噴火事例においてマグマの上昇・脱ガス履歴を明らかにするため,浅間火山および桜島火山噴出物の岩石学的研究を行った.まず,浅間火山の天仁噴火において,軽石とともに多量に噴出する本質物質の石質岩片の含水量や結晶度を調べ,(1)その両者が,火道のごく浅部に上昇してくるまでは,同じ減圧履歴をたどったこと(2)斑晶を除いた部分の発泡度が60%に達した時点で,気泡の連結度が急激に上昇し,軽石として破砕をするか,圧密を起こして石質岩片となるかの分岐が発生したこと(3)このことから,浅間火山においては天仁噴火時のマグマ上昇速度が,ちようど爆発的な噴火と非爆発的な噴火の分岐点付近にあり,このときの減圧速度をマイクロライト結晶化実験などによって決定することにすることにより,将来の噴火活動において,噴火様式の半経験的な予測ができる可能性があることが明らかとなった.また,桜島火山のもっとも最近の爆発的噴火である大正噴火において,メルト包有物の揮発性成分量の分析を顕微赤外分光法で行った.その結果,珪長質端成分マグマ由来の斑晶に含まれるメルト包有物は,含水量が最大で約2.4%であり,珪長質端成分マグマ溜まりは桜島直下数kmの浅部に存在すると予想された.また,まだデータ数は少ないものの,高温端成分マグマ由来の斑晶に含まれるメルト包有物は,相対的にCO2に富む傾向にあり,より深部のマグマ溜まりから供給されたことが示唆された.さらに,斜長石に含まれる磁鉄鉱の包有物および磁鉄鉱斑晶の化学組成から,大正噴火の準備過程では,マグマ溜まりに苦鉄質マグマが繰り返し注入されて継続的に温度が上昇していったことが明かとなった.以上から,桜島火山下のマグマ供給系は二段階のマグマ溜まりからなり,噴火の根本的な駆動力は苦鉄質端成分マグマが持っていることが明らかとなった
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