研究課題/領域番号 |
21340155
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
中村 美千彦 東北大学, 大学院・理学研究科, 教授 (70260528)
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研究分担者 |
栗谷 豪 大阪市立大学, 大学院・理学研究科, 准教授 (80397900)
安井 真也 日本大学, 文理学部, 准教授 (90287566)
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キーワード | ブルカノ式噴火 / ガス溜り / 気泡形状緩和 / マグマの浸透率 |
研究概要 |
安山岩質マグマに特徴的な、ブルカノ式噴火の活動の推移を理解するためには、爆発の駆動力を担っているとされる火口直下の"ガス溜まり"の実態を理解する必要がある。今年度は、ガス溜り条件(水蒸気圧60気圧・温度1000℃まで、酸素分圧はNNO緩衝)を発生する独自の実験方法により、マグマからの極微細な鉱物(ナノライト)の晶出実験を行った。その過程で、メルトの結晶化のみならず、発泡組織の迅速な緩和が発見された。これはメルトの表面張力が粘性力に勝って気泡形状が球形に近づく現象であり、マグマ中の空隙が孤立化して浸透率の大幅な低下を起こすことが予測される。すなわち、ガス溜りに過剰圧が蓄積される主要な素過程を突き止めた可能性がある。そのため、結晶作用とともに、新たに気泡形状の変化について、重点的に調べた。実験は、爆発直後の火道内マグマの条件を模擬する物質として、より深部で破砕・急冷したプリニー式(桜島大正噴火)軽石を用い、シリカガラスチューブにステンレスジャケットを被せて耐圧限界を上げた独自のセルによって行った。発泡組織の緩和については、空隙の球状化(真円度の上昇)・気泡の合体・空隙連結度の低下・外部に繋がった空隙の組織緩和による見かけ密度の低下(自己圧密)が、1000℃で30分以内に進行し、一方900℃では36時間でも有意な進行を見せずに脱水結晶化による粘性上昇が起こってそれ以上の形状緩和が妨げられてしまうことがわかった。これらのことから、活発でマグマが高温なブルカノ式の活動では、噴火間隔が最短で15-20分程度であることを説明できる可能性がある。一方、ナノライトの結晶作用については、桜島昭和火口や霧島火山新燃岳の噴出物の一部に見られる、鉱物の組み合わせや数密度・結晶形状を再現することができ、これらの火山の活動におけるマグマの定置深度や滞留時間を、実験的に再現できることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
火口直下のガス溜り条件でのメルトの結晶化実験に成功し、順調に実験結果が得られている。結晶サイズがサブミクロンスケールであり、結晶数密度の計測には電子顕微鏡の空間分解能の限界を考慮する必要があるため、解析にはやや時間がかかっているが、一方ガス溜りにおける過剰圧蓄積メカニズムを発見したことは計画以上の極めて重要な成果である。
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今後の研究の推進方策 |
気泡形状緩和の実験については、出発物質や温度圧力条件を広げて実験数を増やし、律速過程の明確化・定量化を進める。また、ガス溜りの過剰圧蓄積に対する、表面張力の効果と重力の効果の相対的な大小関係を理論的な考察から明らかにする。一方、結晶化実験については、温度効果と時間効果の分離(低温・長時間の実験と、高温・短時間の実験の区別)が、どのようなパラメターによって可能かを調べることが重要であり、それができれば、実際の火山噴出物から、ガス溜り・火道浅部でのマグマの定置深度や滞留時間を定量的に見積もることができる。
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