研究課題/領域番号 |
21340156
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
林 謙一郎 筑波大学, 大学院・生命環境科学研究科, 教授 (40124614)
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研究分担者 |
小室 光世 筑波大学, 大学院・生命環境科学研究科, 講師 (40251037)
黒澤 正紀 筑波大学, 大学院・生命環境科学研究科, 講師 (50272141)
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キーワード | 流体包有物 / 沸騰 / 酸素同位体比 / 熱水鉱床 |
研究概要 |
熱水の沸騰は鉱床を伴う熱水系で普遍的に生ずる現象で、気相に富む流体包有物と液相に富む流体包有物が共存する事などによって、沸騰が生じていたことの証拠とされている。沸騰に伴い、一部の揮発性の金属が気相として運ばれ、特定の鉱床に濃集する可能性がある。この点を実験的に再現するためにCuおよびZnの気/液分配について硫黄を含む熱水溶液中で明らかにする。さらに、地下浅所で形成された鉱脈では、熱水の沸騰が鉱物の沈殿の引金となっていることを脈石石英の酸素同位対比の測定から明らかにする。 CuやZnなどの金属は硫化物錯体として溶液中に溶存していると考えられ、金属の気/液分配に関与する硫黄の影響を明らかにする目的で、熱水合成は種々の硫黄還元種存在下で行った。合成流体包有物中の重金属濃度の分析を、放射光蛍光X線法によって行った。熱水が沸騰すると水の酸素同位体比は大きく変動し、その熱水から沈殿する石英などの脈石鉱物の酸素同位体比も変動する。石英の酸素同位体比の測定をサブミリメートル単位で行い、熱水の沸騰の指標とすることができる。CO2レーザー加熱五フッ化臭素法によって鉱脈型鉱床の脈石石英の酸素同位体比を分析した。北海道、豊羽鉱床の鉱脈群のいくつかについて得られたデータでは、前期脈および後期脈で酸素同位体比に系統的な差がみられた。石英の酸素同位体比から見積もられる熱水の同位体比は、-9.3~-4.2‰(前期脈)および-7.7~+1.6‰(後期脈)で、後期脈を形成した熱水は堆積岩を同化したマグマに起源を有する。モンゴル西部の、バヤンオンゴル帯の金鉱床についても脈石石英の酸素同位体比を求めた。含金脈と後期の石英・炭酸塩脈では全く異なる同位体比を示すことから、両者の形成に関与した熱水は異なる起源である。
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