研究概要 |
21年度予定していたフランス・ピレネー山脈のLherz岩体とスペインのRonda岩体の調査および試料採集を10月13日~11月4日にかけて研究協力者のJean-Louis.BodinierとCarlos Garridoの協力を得て実施した。ピレネー山脈では、Lherz岩体に加えてその周辺のFontete Rouge, Freychinede, Vicdessos, Sem, Caussou, Bestiac, Moncaut等の岩体からも試料採集し、数十キロメートル以上のスケールでの温度・圧力履歴解読への足がかりを作る事が出来た。また、Ronda岩体では、岩体の基本構造単位を南北にカバーするルートに沿ってかなり密度の濃い定方位サンプリング、数ヵ所の露頭で数メートル~10cmスケールの高密度サンプリング、Ronda岩体東部のOjen岩体のサンプリングを実施した。調査範囲、調査の密度、サンプル量などにおいて、当初計画していた以上の成果をあげることができ、採集した岩石試料は合計で500kgに達する。特に、より高温高圧の温度圧力履歴の解析にとって重要なセンチメートル級の巨晶を両地域で数多く見出し、輝岩やクロミタイト層とその周辺のかんらん岩も採集することができた点は、今後の解析作業にとっては重要な成果である。現在までに、Lherz岩体の試料について薄片作成、XRF全岩化学分析、EPMAやFE-SEM/EBSD分析を進めており、以下のような発見をしている。(1)Lherzのスピネル輝岩中にスピネルと他の鉱物との粒界に普遍的に発達する斜長石を見出し、明確な減圧の証拠を得た。(2)輝石のサイズや岩石種にかかわらず、AlとCaの累帯構造は一方的な冷却を示している。(3)輝岩中の1センチメートル級の斜方輝石は、中心領域に厚い斜方輝石のラメラ、周辺部に薄いラメラがあり、少なくとも2段階の冷却ステージがあることが判明した。
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