研究課題
本研究では、ヨーロッパの主要な3つのマントルかんらん岩体を対象として、マントル物質の温度・圧力経路・履歴を探ることを目的としている。23年度には、22年度に調査サンプリングを行ったスペインのロンダかんらん岩体のEPMA分析を進めた。特に、岩体北部に分布するざくろ石を含むかんらん岩とその中に介在している苦鉄質岩の詳細な元素マッピングと定量分析を行った。その結果、以下のような事が明らかとなった。(1)先行研究では、野外の産状などからロンダかんらん岩体のざくろ石かんらん岩は、もともとざくろ石輝岩とざくろ石を含まないかんらん岩で構成されていたが、ざくろ石とかんらん石が共存可能な温度圧力条件下で強い変形流動に伴う機械的混合作用を被って形成されたと考えられていた。しかし、その混合のタイミングについては、不明であった。今回、1cm以下のざくろ石輝岩のCrが周囲のかんらん岩との接触面から減少する傾向にあり、またその減少パターンは場合によってひどく非対称であること、輝石に取り囲まれたざくろ石のCr含有量が低い傾向があること、ざくろ石は周囲から輝石-スピネルの集合体に分解しつつあり、かんらん岩中に孤立しているものはCr濃度が高いこと、一般にざくろ石の中心から縁に向かってCrが増加する傾向があることがわかった。これらの事実は、混合過程がざくろ石-かんらん石安定領域から上昇減圧するタイミングで輝岩の脆性破壊とざくろ石のかんらん岩への混合が起きたことを示している。(2)輝岩中では、ざくろ石あるいはその分解生成物である輝石-スピネル集合体と接触する斜方輝石はAl含有量がざくろ石に向かってわずかに増加するが、かんらん岩中に孤立する斜方輝石は縁に向かって一方的にAlが減少する。両者共に、Caは中心から縁に向かって減少している。以上の事から、(1)の上昇過程は、一方的に冷却を伴っていたことが判明した。
すべて 2012 2011
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (3件)
American Mineralogist
巻: 97 ページ: 80-99
10.2138/am.2012.3750
Mineralogy and Petrology
巻: 101 ページ: 217-224
DOI 10.1007/s00710-011-0145-y
Journal of Petrology
巻: 52 ページ: 1887-1925
doi:10.1093/petrology/egr034
The Astrophysical Journal
巻: 736
doi:10.1088/0004-637X/736/1/16
Journal of Mineralogical and Petrological Sciences
巻: 106 ページ: 277-298
doi:10.2465/jmps.100306