本研究の目的は、「初期地球に落ちた隕石中の有機物がどのように化学進化したのか?」を探ることである。このために、平成21年度は基礎研究として、化学進化で重要な役割をしたと考えられる有機物の分析法の開発と、それら有機物の衝撃実験を行った。 1.出発物質の選定とその分析法の開発 出発物質の有機物としては、隕石中に比較的高い存在度を示し、生命にとって重要な有機物であるアミノ酸とカルボン酸を選択した。アミノ酸については、エステル化とアシル化を行うことで沸点を下げ、GC-FIDとGC-MSによって定性、定量分析を行った。カルボン酸については、エステル化のみの操作であるが、エステル化剤としてブタノールとイソプロピルアルコールを比較検討し、副生成物が極端に少ないイソプロピルアルコールを使用することとした。これらの操作はすべてクリーンルームで行なわれ、周囲からの汚染を可能な限り除去することに成功した。 2.衝撃実験 アミノ酸の衝撃実験においては、15~20GPa付近で急激に分解、35GPa程度で95%が分解、20GPa付近では出発物質の2分子が重合してペプチドが生成、などが明らかになった。また、分解したアミノ酸の一部は酸加水分解を経ることで再びアミノ酸に戻ることも明らかになった。カルボン酸については、20~25GPa付近で急激に分解、35GPa程度で80~90%が分解、などが明らかになり、一般に、アミノ酸よりもカルボン酸の方が衝撃に対して安定であることがわかった。
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