研究概要 |
コンドリュールは主にケイ酸塩鉱物とガラスから構成され、高温での溶融後、急冷固化してできた直径1mm以下の球状物質である。小惑星帯から飛来する隕石に特徴的な物質で、多くの隕石では体積の60-80%を占める。コンドリュールは太陽系の内側に存在していたため、円盤内側で形成された小惑星には多く含まれている。我々の研究で、円盤外縁部起源の短周期彗星からコンドリュールが発見されたことは、形成期の太陽系には円盤内側領域だけでなく外側領域にもコンドリュールが存在していたことを示す。極低温の円盤外縁部でのコンドリュール形成は考えられないため、コンドリュールは太陽系の内側から外側へ輸送されてきたと考えられる。本研究では、彗星サンプルの分析を計画的、体系的に行い、原始太陽系円盤内でのコンドリュールの形成および輸送過程について確たる証拠をさらに集めることを目的とする。 本年度はこれまでに発見した彗星塵コンドリュール類似粒子の電子顕微鏡によるケイ酸塩鉱物の主要、微量元素分析を詳細に行い、彗星のコンドリュールを構成するケイ酸塩鉱物の化学組成と小惑星のコンドリュール(炭素質コンドライト隕石中のもの)の化学組成の比較検討を行った。その結果、彗星のコンドリュールは小惑星のそれと比較すると、カンラン石や輝石の鉄マグネシウム比の範囲は類似しているが、微量元素(MnO,Cr203など)の含有阜が多いものが多いことがわかった。また、斜長石の組成は(彗星中の分析点は少ないが)、アルバイト成分に卓越していることがわかった。また、彗星塵のうち、マトリックス部分(細粒部分)を構成していたと考えられる5粒子の主要、微量元素濃度を電子顕微鏡で測定した。その結果、EPMAで測定できる元素群については、CIコンドライトから求めた太陽組成とほぼ一致していることがわかった。また、シムスによる希土類元素定量方法も確立し、マトリックス部分のそれら元素の濃度は太陽組成と大きくは違わないことがわかったが、低濃度の希土類元素の定量性を今後改善していく必要があることもわかった.
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