コンドリュールは主にケイ酸塩鉱物とガラスから構成され、高温での溶融後、急冷固化してできた直径1mm以下の球状物質である。小惑星帯から飛来する隕石に特徴的な物質で、多くの隕石では体積の60-80%を占める。コンドリュールは太陽系の内側に存在していたため、円盤内側で形成された小惑星には多く含まれている。本研究では、スターダスト探査機が回収した彗星サンプルの分析を計画的、体系的に行い、彗星のコンドリュールの起源と形成について解明することを目的とする。 本年度はこれまでに得られたデータを総合的に解析し成果をまとめた。短周期彗星ビルド2から回収された彗星塵の解析の結果、(1)彗星塵の約10%は結晶質粒子であり、小惑星に含まれるコンドリュールと同一の組織、鉱物組み合わせを示す。(2)彗星コンドリュールはMgOに富むタイプIとFeOを含むタイプIIが存在する。(3)全溶融を経験したBOやRPコンドリュールは発見されていない。(4)コンドリュールを構成するケイ酸塩鉱物の酸素同位体比は幅広い組成を示し、大部分がCap deltaがマイナスの値を示す。また、太陽の酸素同位体比に近い値を示すコンドリュールも存在する。(5)ひとつのタイプIコンドリュールの年代決定をAl-Mg系で測定した結果、26Alの過剰は検出されなかった。このことは、小惑星のコンドリュールよりも遅く形成された可能性を示す。欧米の研究グループの結果も同様で、コンドリュール、CAIともに26Alの過剰は検出されていない。以上のことから、彗星のコンドリュールは、太陽近傍で形成された前駆物質が小惑星のコンドリュールに比べると遅い時期に部分溶融することで形成され、彗星に取り込まれたと考えられる。また、彗星の反射スペクトルで検出される結晶の吸収はコンドリュール起因である可能性が高いことがわかった。
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