研究課題
サンゴの炭酸塩骨格の化学組成は、古気候を推定する間接指標として広く用いられている。しかし、その記録プロセスには生物が介在するため、これまで十分に考慮されてこなかった環境-生物間相互作用に起因する「推定の不安定性」が存在する。本研究では、実験計画法の基準に基づいて管理された環境で現生のサンゴを飼育し、環境と骨格組成を繋ぐ、より正確な関係式を構築する。「酸素同位体比(δ^<18>O)」、「ストロンチウム/カルシウム比(Sr/Ca比)」および「炭素同位体比(δ^<13>C)」の3つのサンゴ骨格の間接指標の挙動解明を目的として、生物学的手法と地球化学的な分析を駆使した総合的な研究を実施する。達成目標は以下。1)δ^<18>O-Sr/Ca比複合指標法の精度おを、サンゴの精密水槽飼育実験から解明する。2)石垣島・小笠原・フィリピンなどから採取されているサンゴ骨格長尺試料にδ^<18>O-Sr/Ca比複合指標法を適用し、150~200年間の水温と塩分の変動を分離して精密に復元する。3)精密水槽飼育実験から得られた知見を、気候復元に適したサンゴ試料の具体的な選定指針としてまとめる。特に種が不明なハマサンゴ化石を用いる際のガイドラインを作成する。平成22年度は、1950年以前の海洋の水温塩分変動を復元するために、昨年度に引き続き分析未了区間について分析を進め、さらに約2週間の時間分解能を目標に追加分析を実施した。酸素・炭素の安定同位体比の測定には、産業技術総合研究所所有Isoprine質量分析計を、また、Sr/Ca比の測定には、同じくICP発光分光分析計を使用した。石垣島およびフィリピン東岸より採取された試料を重点的に、長尺試料の分析を完了し、水温の急変現象および気候のレジ無シフトについて解析を行なった。
すべて 2010
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (3件)
Geophysical Research Letters
巻: 37 ページ: 2010GL043451
巻: 37 ページ: 2010GL043572
Geochemistry, Geophysics, Geosystems
巻: 11 ページ: 2009GCO02893