研究概要 |
LHDプラズマにレーザー光を入射し,プラズマによるレーザー光の吸収量を調べた.レーザー光は既存の分光計測用光ファイバにより装置まで伝送した.分光計測用光ファイバはコア径が100μmのマルチモードファイバであり,コリメータによる集光度が悪く,入射位置から約8m離れた位置では効率の良い受光が難しいことが明らかとなった.そのため,現状ではS/N比が悪く吸収プロファイルの計測には至っていない.しかしながら,微小ではあるが有意な大きさの吸収が検出され,伝送系および集光光学系の最適化により当初の目的である飽和吸収分光計測を行う見通しが立った. ダイバータシミュレーション装置では60ガウスから1000ガウス程度の範囲で磁場強度を変化させた放電を行い,磁場強度に応じてゼーマン分裂スペクトルが得られることを確認した.一般的な吸収分光では,ドップラー広がりに隠されてこのような低い磁場強度のゼーマンスペクトルを観測することは不可能であり,ドップラーフリー分光計測の有用性を実証することができた.また,本計濁ではレーザーの光軸が磁場方向と一致しているため原理的にはσ光成分しか検出されないはずであるが,実際にはπ光成分に対応する波長位置にわずかな信号が現れていた.これまでは光軸と磁場方向との間のわずかなずれがその理由と考えていたが,これはクロスオーバー共鳴線と呼ばれる,現実には存在しないが飽和吸収分光計測のシステム上現れる信号として説明できることがわかった.他にも計測されたスペクトルには同定されていない信号線が多く存在していたが,それらはほとんどすべてクロスオーバー共鳴線として理解できることがわかった.しかしながらいくつかのクロスオーバー共鳴線は,通常の原子構造を説明する理論では起こりえないものであることも判明し,現在原因を調査中である.
|
今後の研究の推進方策 |
直線プラズマでの基礎実験はほぼ終了し,本年度はLHDでの計測に注力する.予備的に行った前年度の計測では既設の分光用光ファイバがレーザ「光伝送に適していないことが判明したため,本年度は通信用シングルモードファイバを利用する.レーザー光の同ファイバへの導入効率は若干落ちるが,コリメータによる集光効率が高く,本計測に最適であることを確認した.また,価格は分光用と比べ単位長さあたり20分の1程度であるので今年度の予算で十分整備できることも確認している.
|