研究課題/領域番号 |
21350002
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
武次 徹也 北海道大学, 大学院・理学研究院, 教授 (90280932)
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研究分担者 |
野呂 武司 北海道大学, 大学院・理学研究院, 准教授 (50125340)
中山 哲 北海道大学, 大学院・理学研究院, 助教 (10422007)
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キーワード | AIMD法 / シトシン / 非断熱遷移 / DNA塩基の光安定性 / 光異性化 / 励起寿命 / 円錐交差 / 状態平均MCSCF法 |
研究概要 |
本課題では、これまで主としてモデルポテンシャルに基づき進展を遂げてきた動力学の手法に、state-of-the-artの域に達している電子状態計算手法を融合させ、モデル系ではなく実在系の反応ダイナミクスをシミュレートする「第一原理反応動力学法」を確立することを目的として研究を進めている。本年度は、非断熱遷移を実装したコードをDNA塩基の光安定性の問題に適用し、そのメカニズムを明らかにした。近年の実験技術の向上により、単分子DNA/RNA塩基は紫外領域に吸収帯を持ち励起寿命が1ps程度と非常に短く、光吸収後の超高速減衰過程がDNA/RNAの紫外線損傷に対する防御機能に深く関わっていることがわかってきた。DNA塩基の中で最も単純な構造を持つシトシンは、励起寿命が約720fsであることが実験的に報告されており、理論計算により、ππ^*-nπ^*間、nπ^*-基底状態間にいくつかの円錐交差(CI)が存在し、これらを経由した無輻射失活が起こることが指摘されている。本研究では、シトシンの光励起ダイナミクスの詳細を明らかにすることを目的としてCI探索ならびにCASSCFレベルでのAIMDシミュレーションを行った。その結果、n_Oπ^*-ππ^*状態間とn_Oπ^*・n_Nπ^*・ππ^*-基底状態間にそれぞれCIが見つかり、基底状態からππ^*状態に光励起された後、CIを通じて基底状態に遷移するいくつかの経路が存在することが確認された。さらにAIMD計算により、基底状態からππ^*状態に光励起した後nπ^*状態に乗り移り、S_1の最安定構造付近に到達した後、n_Oπ^*/基底状態、n_Nπ^*/基底状態の円錐交差を通じて基底状態に遷移する様子が確認された。ππ^*状態からの経路は、障壁が高いため通りにくいと予想される。
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