研究課題/領域番号 |
21350002
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
武次 徹也 北海道大学, 大学院・理学研究院, 教授 (90280932)
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研究分担者 |
野呂 武司 北海道大学, 大学院・理学研究院, 准教授 (50125340)
中山 哲 北海道大学, 大学院・理学研究院, 助教 (10422007)
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キーワード | AIMD / 非断熱遷移 / 励起状態 / 溶媒効果 / 同位体効果 / WKB近似 / 多次元トンネル効果 / QM/MM |
研究概要 |
本課題では、動力学の手法に電子状態計算手法を融合させ、モデル系ではなく実在系の反応ダイナミクスをシミュレートする「第一原理反応動力学法」を確立することを目的として研究を進めている。本年度は、非断熱遷移を考慮したAIMD法を光異性化反応(スチルベン、アゾベンゼン)、光解離反応(CH3I)、DNA塩基(シトシン)の光安定性の検証へと適用し、反応機構、状態遷移機構を解明し、生成物の分岐比、励起寿命、エネルギー分布において実験値と良い一致を得ることに成功した。また、反応にそれほど関与しないと考えられる自由度を固定して分子動力学計算を行うRATTLE法をAIMDコードに実装し、タイムステップを長めにとることでコスト削減を実現した。さらにQM/MM法をAIMDコードに実装し、7-azaindole、Coumarinl51の溶液内励起緩和過程のダイナミクスへと適用し、緩和機構に関する知見を得た。また、生体分子で重要な役割を果たす励起プロトン移動で重要となるトンネル効果を議論する手法を構築するため、MakriとMillerが提案したWKB近似に基づく半古典法をAIMDコードに実装し、テスト計算として電子基底状態におけるマロンアルデヒドの分子内プロトン移動反応へと適用した。マロンアルデヒドの分子内プロトン移動反応におけるIRCは遷移状態前後で大きく曲がることが知られており、自由度間に過剰なエネルギー移動がみられたことから、トンネルに直接係わるOO環歪みとOH伸縮振動の2自由度にのみ零点振動エネルギーを与え、それ以外の19自由度については古典的エネルギーkTを与え、bath modeの効果を評価した。AIMDシミュレーションの結果、同位体効果も含めてトンネル分裂の実験値をほぼ再現することに成功した。
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