研究概要 |
1.キラルな結晶M(BTC)(H_2O)(DMF)n(M=Y, Dy, Er, Yb、BTCはベンゼントリカルボン酸イオンDMFはジメチルホルムアミド、結晶はすべて同型で空間群はP4_122もしくはP4_322)は、結晶のc軸方向に伸びるキラルな一次元チャンネル中を持つ。溶媒分子を抜いたこの結晶に77Kで6気圧までH2の吸蔵実験を行ったところ金属原子一個あたり3分子強のH2を吸蔵することを見いだした。また、磁性を持たないM=Y錯体結晶は磁性を持つ他の錯体結晶に比べてH2吸蔵量が多いことを見いだした。これはH2分子の核スピン異性体の濃度の違いによると考えている。 2.吸蔵された水素分子の状態を調べるために本研究課題で開発した固体NMRプローブを用いて重水素D_2吸蔵体のin-situ D-NMRスペクトル測定を行った結果、昨年度までに研究を進めた水素吸蔵錯体[M_2(O_2CPh)4pyz]n(M=Rh, Cu ; pyz=pyrazine)に比べて、水素分子の束縛が弱く、ほぼ自由回転していることが解った。そのためこのキラルな結晶は高温では水素を内部に保持できない。 3.EuやTbだけを中心金属としたキラルな結晶はできないことが判明したが合成時にYとEuあるいはTbを混ぜると同型のキラル結晶が得られた。これらの結晶は波長254nmの紫外線照射により発光することを見いだした。単結晶のキラルなチャンネル方向(結晶のc軸方向に)強く発光するという大きな異方性を見いだし、キラル構造との関係を探っている。 4.気体吸蔵と発光特性との関係については、低温で酸素分子を吸蔵した状態では発光の減衰がほとんどみられないが吸蔵しない室温酸素雰囲気下では発光の大きな減衰がみられることを見いだした。 5.このキラルチャンネルに吸蔵されたCO2集合体は相転移を起こすことを熱測定により見いだした。
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