本研究の目的は、超音速分子線装置を用いてエネルギー制御した原子・分子を固体表面に照射した後の分子の分布を走査型トンネル顕微鏡(STM)を用いて測定することにより、分子摩擦を測定することである。超音速分子線を用いた原子・分子照射担当の高岡(研究代表者)と分子分布測定担当の米田(研究分担者)の間で緊密な連絡を取りながら分子摩擦の観測を行い、分子摩擦機構を解明するために、超音速分子線装置と走査型トンネル顕微鏡を組み合わせ実験装置の準備を行った。平成21年度は、以下の通り、実験設備の準備を行った。 (1)振動対策が十分なされた走査型トンネル顕微鏡(STM)ヘッドの設計・製作超音速分子線装置に多数の真空ポンプを使用しており、その振動によりSTMの原子分解能が得られなくなることを防ぐため、振動対策が十分なされたSTMヘッドを設計・製作した。試料の清浄化や分子の吸着などは超高真空装置に備え付けの試料ホルダーを用いて行うので、試料をSTMヘッドと試料ホルダーで簡単に移動できるように両試料固定部を製作した。 (2)超高真空装置の除振機構 STMを設置した超高真空装置は除振台に載せるが、この除振台は特注であり、真空ポンプの大きな振動が超高真空装置に伝わらないように振動を遮断する工夫を行った上で設計を行った。 (3)表面温度によって分子が動くのを抑えるための試料冷却装置の設置 本研究では希ガス原子を照射したときの分子の動きを観察するが、そのためには、表面温度を低く保つ必要がある。表面温度が高いと分子が熱拡散するためである。表面温度を低く保つために、試料ホルダーに取り付ける冷却機構の設計を行った。
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