本年度は、前年度までに開発した反応経路探索の計算手法を応用して、下記の研究を展開した。 (1)RuHC1-BINAPの不斉触媒反応機構を、Microiteration法を駆使して解析し、この触媒によって非常に高い不斉収率が得られていることの分子論的機構を明らかにした。 (2)ジアルキルシランイミンの反応と構造を超球面探索法で自動探索し、アルキル基を含むシランイミンの生成機構を明らかにするとともに、実際の合成実験および構造解析実験にもとづく検証を行った。 (3)シリコンのSi(001)表面上でのo原子の反応過程を、表面モデルに対するLADD法の適用により自動探索し、従来から知られている反応機構を確認するとともに、これまでまったく報告されていなかった新機構の存在を明らかにした。 (4)ホルムアミドの水和クラスターの光イオン化に伴う異性化反応機構について、LADD法の適用により、実際の実験条件における水の触媒作用を解析し、クラスター中における水分子の存在による触媒作用のメカニズムを明らかにした。 以上に加え、化学反応経路探索に関するシンポジウム(化学反応経路探索のニューフロティア2010)を開催し、GRRMプログラムの特性と応用の可能性を解説して一般への普及をはかるとともに、GRRMプログラムを用いて得られる膨大な探索結果を自動解析するプログラムGRRM-GDSPシステムの開発を進めた。また、GRRMプログラムによる反応経路探索を、複数の演算装置に分散して並列処理できるようにGRRMプログラムの計算コードの開発整備を進め、その汎用化のための準備を推進した。さらに、Web上からの制御でGRRM-GDSPを運用できるWebGRRMシステムの開発に着手した。
|