研究概要 |
本研究課題の、最終年度にあたり、反応経路高速自動探索法の利便性の向上と有意義な応用に重点をおいて進めた。このため、反応経路探索を行うワークステーションとデータの入出力を行うPCとの間のデータの円滑なやり取りを可能にするインターフェイスを構築した。また、探索結果を可視化して利用しやすくするためのデータ処理システムを、PCからワークステーションに直接アクセスして操作できることを確認した。また、立体反応過程探索および反応機構解析への効果的な応用に努めた。 以上のデータ処理システムの計算プログラム開発は、研究代表者が中心となって進めたが、本研究課題で開発を進めてきた反応経路探索プログラム全体の整備と利用マニュアルの作成を、研究協力者(京都大学助教前田理博士、東北大学大学院博士後期課程長田有人氏)の協力を得て進めた。また、とくに活発な研究を行っている化学反応経路自動探索プログラムGRRMのユーザ(北海道大学、東北大学、・名古屋大学、京都大学、九州大学、お茶ノ水女子大学、横浜国立大学、理化学研究所、分子科学研究所、国立情報学研究所など)に、GRRMプログラムのモニターとして、ユーザ側の問題提起をフィードバックしてもらい、GRRMプログラムの改善に反映させるとともに、GRRMユーザ用の利用法マニュアルの補遺を作成した。 研究分担者の岩本は、GRRMおよびデータ処理システムを活用しながら、含ケイ素多重結合化合物に見られる特異な異性化反応である、置換基の二重1,2-転位の反応経路に及ぼす置換基効果(シリル基、アルキル基、芳香族基など)およびシランイミン-シラエナミン転位を明らかにした。また、ONIOM法を併用しながら、これまで研究分担者が明らかにしてきた、嵩高い置換基を持つケイ素π共役系化合物や、特異なσ結合をもつケイ素クラスターの骨格異性化反応の反応経路探索を行い、それらの反応機構を明らかにした。
|