研究課題/領域番号 |
21350011
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
中野 雅由 大阪大学, 大学院・基礎工学研究科, 教授 (80252568)
|
研究分担者 |
太田 浩二 独立行政法人産業技術総合研究所, ユビキタスエネルギー研究部門, 光波制御デバイスグループ長 (20356637)
久保 孝史 大阪大学, 大学院・理学研究科, 教授 (60324745)
|
キーワード | 開殻系 / ジラジカル / 電場効果 / 非線形光学 / 超分極率 / Ab initio MO法 / 密度汎関数法 / グラフェン |
研究概要 |
本年度は、「一重項ジラジカルモデル系のジラジカル因子の物理的・化学的摂動による変化の解明」を目的として研究を推進した。第一に、ジラジカル分子の2サイトキデルを構築し、その局在化自然軌道基底を用いたValence configuration interaction (VCI)行列を対角化することにより、基底状態や励起状態に関係する諸物性量(励起エネルギー、遷移モーメント、双極子モーメント)をジラジカル因子、外場強度により記述し、第二超分極率γのジラジカル因子依存性の外部静電場強度による変化を解明した。外部静電場の強度に関わらず中間ジラジカル性を持つ領域でγの値は極大をとり、その値は電場強度とともに著しく増大した。また、極大をとるジラジカル因子(静電場なしの場合の値)は電場強度とともに増大した。Half metallicityで考慮される程度の電場強度により、静電場なしのγの極大値に比べて数十倍の増大が予測された。これは、静電場なしの閉殻系に比べると、静電場ありの中間ジラジカル系で2桁以上の巨大なγの増大が生じることを示唆している。この原因は、基底状態と第一励起状態間の仮想遷移過程の寄与の増大にあり、で電場印加による第一励起エネルギーの低下と双極子モーメント差の増大により引き起こされることが判明した。実際に、H_2分子の解離(full CIにより計算)やエチレンの結合軸周りのれじれ(UCCSD(T)により計算)によりジラジカル因子を変化させたモデルにおいて静電場を印加したところ同様の傾向が得られ、本モデルの結果の妥当性が示された。また、このような外場印加系はドナー/アクセプター置換基を導入した非対称電荷分布をもつ開殻一重項系のモデルともみなせるため、非対称開殻一重項系における巨大な非線形光学効果も予測される。現在、ジラジカル因子が異なる実在開殻一重項分子系における電場効果を複数検討中である。
|