研究概要 |
本研究の目標は励起光に紫外パルスを用いて制御光に近赤外パルスを用いたハイブリッド型量子制御を行うことである。そのために,本年度は紫外励起パルスを用いた2パルス初年度に行ったハイブリッド型のプロトタイプとしての近赤外2パルス相関の結果を踏まえて,紫外(UV)フェムト秒パルス(時間幅110fs,波長400nm)と近赤外(NIR)フェムト秒パルス(時間幅70fs,波長800nm)を用いたUV-MR-2パルス相関の計測を行い,励起紫外パルスと制御近赤外パルスによる反応制御の可能性について検討を行った。試料として800nmの光を吸収してトランス-シスの光異性化反応を起こすことで知られているシアニン色素の1種であるIndocyanine Green (IR125)を用いた。異性体による過渡吸収に関するUV-NIR-2パルス相関を測定した結果,数100フェムト秒の時定数を持つ顕著な相関信号が観測された。また,紫外パルスと近赤外パルスの強度を変えた2パルス相関の測定から,光異性化に関して近赤外パルスは2光子過程で関与しており,紫外パルス1光子過程で関与していることが明らかになった。この結果は,紫外励起パルスを使った場合でもパルス間隔を変えることで光異性化反応の反応効率を制御できることを意味している。したがって,紫外パルスを励起光としたハイブリット型制御が原理的には可能であることが示唆された。今後,より反応選択性を高めた量子制御へと発展させるためには,初年度に作製したNOPAシステムの融合や近赤外パルス列などの波形整形技術の融合を行う。ただ,紫外励起・可視近赤外制御のハイブリッド型制御を実現するためには,現在の2パルス相関の結果を見る限りはSIN比が十分とは言えず,試料の選択や過渡吸収のモニター方法といったSINの向上を図る工夫を行う。
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