研究課題
申請者らは、内殻励起による特定の結合切断反応の選択性が自己組織化単分子膜(SAM)上において向上することを見出し、その選択性とアルカン主鎖長との関連を精密に調べることによりサイト選択的イオン解離反応の反応機構の全貌を解明することを目的として、本研究課題の最終年度である平成23年度の研究計画を実施した。以下、平成23年度の研究実績を記述する。1,アルカン鎖(CH2)nのnが15のMHDA-SAMを標準試料として、昨年度までに購入した鎖長の異なる試薬(n=2-21)を用いてSAM膜試料を作成し、内殻励起によるサイト選択的結合切断反応の実験を実施した。その結果、nの増加とともに内殻励起反応の反応確率は向上するが、結合切断反応の選択性はやや低下することを確認した。2.SAM膜の主鎖中に芳香環を挿入したSAM膜試料の実験も並行して行い、内殻励起による結合切断の選択性が向上することを確認した。主鎖中に芳香環を挿入したことにより、反応部位と基板間の伝導性が増し、励起状態の寿命が短くなったために、選択的な速い反応以外の2次的反応が抑制されたことにより選択性が向上したと結論した。3.理論面からの研究も並行して進めており、上記1、2の実験結果は、申請者がこれまでに提案してきた仮説を支持する有力な知見である。
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