研究概要 |
強光子場であるパルスレーザーを固体表面に照射すると,表面近傍の原子・分子は高密度に励起され,融解・蒸発・電離・結合切断などの緩和過程を経て,最終的に秒速数百mの速さで噴出する。この現象は,パルスレーザーアブレーションとして知られ,噴出した原子・分子からなる高密度のガス状雰囲気(プルーム)には,新物質や未来材料になるクラスターやナノ構造体が多く含まれる。特に有名な系としては,サッカーボール型の分子でC60やカーボンナノチューブなども,この方法での試料生成が確認された。本研究では,新規ナノ構造体の宝庫でありながらも未踏領域が多い強光子場反応場を,複数の手法により詳細に検討する。 本年度は,シリコンのレーザーアブレーションで生成した生成物の光物性測定,構造解析を主に行った。すなわち,超臨界CO2中で単結晶Siのパルスレーザーアブレーションを行い,生成物のフォトルミネッセンススペクトルの経時変化を追った。また,励起波長を変えることで,それらの研究を検証した。その結果,光の三原色での発光,紫外での発光において,長波長側のバンドはほとんど変わらないが,高エネルギー側のバンドは,酸化とともに発光強度が増加することが明らかとなった。バンドごとの変化についてスペクトルをデコンボルーションし,発光強度の時定数を算出した。その結果,高エネルギー側のバンドの増加と,低エネルギー側のバンドの減少の対応が観測された。
|