研究概要 |
本研究では,質量分析計を併用したイオンクラスター分光により,不飽和炭化水素の求核付加・置換反応の反応メカニズムを,クラスター内の分子数まで制御した分子レベルにおいて明らかにすることが目的である。この目標に対し21年度は,一酸化二窒素カチオンN_2O^+による求核付加・置換反応が,どの様な分子との間に,どの様な溶媒環境化で発生するか,またその反応性生物はどの様な構造をしているか,について,赤外スペクトルにより明らにすることを試みた。まず,N_2O^+に対して中性の一酸化二窒素N_2Oを複数個溶媒和させたクラスターイオンN_2O^+・(N_2O)_nの赤外スペクトルを観測したところ,N_2O^+と中性のN_2O1分子で共有結合を形成した(N_2O-ON_2)^+イオンが生成していることがわかった。このイオンの共有結合は酸素原子間で形成されていることが赤外スペクトルより明らかとなった。次に,N_2O^+・(N_2O)_nに対して水を1分子加えN_2O^+・(N_2O)_n・H_2Oクラスターを生成させたところ,N_2O^+はN_2Oとは反応せず,H_2Oとのみ反応することが明らかとなった。反応の結果生成する(N_2O-OH_2)^+イオンイオンにおいても,その共有結合は酸素原子間で形成されていることが明らかとなった。
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