今年度は、波長可変紫外光源システムを導入して、状態選別した分子イオンビームの発生実験およびその性能評価を行い、イオン・分子反応装置への接続を行った。パルスバルブにより超音速NO分子線を発生させ、そのA-X遷移(226nm領域)を経由する共鳴多光子イオン化法により、状態選別NO^+イオンビームを発生させた。また、YAGレーザーの第3高調波(266nm)によるCD_3Iのレーザー光解離法とCD_3ラジカルの共鳴多光子イオン化法を併用したCD_3^+イオンビームの発生実験も行った。得られたスペクトルは、並進温度に近似される分子線回転温度が4Kまで冷却されていることを示し、衝突エネルギーを制御した衝突実験においてエネルギー幅の下限を与える速度幅が120m/sまで抑えられたイオンビーム源となっていると評価できた。このイオンビーム源を、8重極イオンガイドを含むイオン・分子反応装置に組み込み、状態選別した反応実験装置の主要部分を完成させた。イオンガイドに加えるRFポテンシャルは、市販のRF発生器とRF増幅器に加えて、複数のトロイダルコアを持つ共振式インターフェース回路を用いることにより、プロトン生成物や高発熱反応からのイオン生成物の再捕捉が可能となる1-30MHzの範囲での100Vp-pのRF供給を可能とした。衝突エネルギーを制御する電極群の挙動が数値シミュレーション結果と大きく異なったことから、引き込み電極群の詳細を明らかにする目的を含めて、散乱分布測定の予備実験としてイメージング法を行い、その画像解析を行った。イオン発生部分の電極群の問題点を明らかにして、来年度に散乱実験を行うための条件を精査することができた。
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