研究概要 |
本研究の目的は、新世代農薬のリード化合物として注目される高次構造天然物ソラノエクレピンAおよびアザジラクチンを対象とし、それらの不斉全合成を目指すと同時に、その過程で得られる各種誘導体を生物活性試験に付して構造活性相関を解明することにある。 前年度、本研究の最大の目標であったソラノエクレピンAの世界初の全合成を達成し、合成品についてジャガイモシストセンチュウの孵化実験を行った結果、極めて低濃度で孵化促進活性を示すことを実証した。ただし、その活性(孵化率)は60%くらいであり、天然品に比べると若干の低下が認められた。これは、ソラノエクレピンAの活性を増強する因子が土壌中に存在することを示唆している。そこで本年度は、北海道農業研究センターとの共同研究により、1)孵化活性を増強する因子の探索、2)ソラノエクレピンAの構造をモチーフにした代替分子の合成と活性検査を実施した。前者については、土中で合成品の試験を行い、孵化率が80%以上に向上することを明らかにした。後者については、構造を大幅に簡略化した化合物SNC-001を設計し、このものをソラノエクレピンAの半分以下となる21工程で合成した。SNC-001の活性試験を行った結果、ソラノエクレピンAの1000倍の濃度で20%程度の孵化率を示すことを見出した。 アザジラクチンの全合成研究については、前年度までにA環部に酸素官能基を導入したジエノールトリフラートではヒドロホウ素化反応が進行しないという問題点が浮上している。そこで今年度は、モデル化合物を用いて異なるアプローチによる環状アリルボラン合成を試みた。具体的には、ボロン酸誘導体の共存下でβ,γ-不飽和ニトリルにLDBBを作用させることで還元的ボリル化反応が起こることを見出した。
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